2005年の定演でやっていたラテン語。それについて、私の知っている知識を少しでもほかの人に分けてあげたいので、このような文章を書くことにしてみた。
2005年度の白ばらのラテン語の発音は、私の知る限りだと「俗ラテン語式」で、私の習ってきた「古典式」からは母音の長短が発音の違いに変化してたり、一部の子音の発音が変わってたり、細かい点が変化しているけれど、アクセントの位置は変化していないので、その点を中心に述べていこうと思う。
古典式の発音は、母音は、それぞれに長短がある単母音a、e、i、o、u、yと、二重母音ae、oe、au、euがあり、子音は、破裂音p、b、ph、t、d、th、c、k、q、g、ch、鼻濁音m、n、摩擦音f、s、h、流音l、r、半母音i/j、u/v、二重子音x、zがある。
次に、アクセントの位置を決定する上で重要なポイントの一つである、音節の切り方について説明する。音節の核には母音があり、子音については、問題になるのは語中の子音が前後の母音のうちのどちらかに付くかであるが、原則として子音の連続のうち最後の子音のみを後の母音に付け、残りは前の母音に付ける。ただし、二重子音は2つの子音としてカウントし、流音と半母音はカウントしないものとする。例) de-us(神、euは二重母音ではなく単母音+単母音)、Je-sus(イエス)、ad-dux-e-runt(連れて来た、実際はxの[k]と[s]の間で音節が切れる)te-ne-brae(闇)、qui(関係代名詞、qの後のuは半母音)。
これを踏まえたうえで、アクセントの位置の決定方法を説明する。音節の数が1つないし2つの場合、先頭の音節にアクセントが来る。音節の数が3つ以上の場合、最後から2つ目の音節が短母音で終わる場合、最後から3つ目の音節にアクセントが来る。最後から2つ目の音節が長母音、二重母音、子音で終わる場合、最後から2つ目の音節にアクセントが来る。
動詞は活用する。一人称二人称三人称で活用し、単数複数で活用し、現在過去未来で活用し、未完了完了で活用し、能動態受動態で活用し、直説法間接法(英語で言うところの仮定法に相当する)で活用する。3×2×3×2×2×2=144通り?実際は受動態完了形は存在せず、間接法未来系も存在しないので90通り、しかし、さらに不定形(英語で言うところの不定詞に相当する)、命令形、分詞、動名詞なんかがあったりしてもう大変。例としてelongo(遠ざける)を挙げる。elongatusの動詞形だ!
未完了 | 完了 | ||||||
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現在 | 過去 | 未来 | 現在 | 過去 | 未来 | ||
単数 | 一人称 | elongo | elongabam | elongabo | elongavi | elongaveram | elongavero |
二人称 | elongas | elongabas | elongabis | elongavisti | elongaveras | elongaveris | |
三人称 | elongat | elongabat | elongabit | elongavit | elongaverat | elongaverit | |
複数 | 一人称 | elongamus | elongabamus | elongabimus | elongavimus | elongaveramus | elongaverimus |
二人称 | elongatis | elongabatis | elongabitis | elongavistis | elongaveratis | elongaveritis | |
三人称 | elongant | elongabant | elongabunt | elongaverunt | elongaverant | elongaverint |
名詞まで活用しちゃうラテン語。日本語の「てにおは」に相当するものを活用で表しちゃうのだ。主格(〜が)、呼格(〜よ)、属格(〜の)、与格(〜に)、対格(〜を)、奪格(〜から)の6種類の「てにおは」を活用であらわすのだ。こっちも例としてego(私)とdominus(主人)を挙げる。
ego | 単数 | 複数 | dominus | 単数 | 複数 |
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主格 | ego | nos | 主格 | dominus | domini |
呼格 | ego | nos | 呼格 | domine | domini |
属格 | mei | nostri/nostrum | 属格 | domini | dominorum |
与格 | mihi | nobis | 与格 | domino | dominis |
対格 | me | nos | 対格 | dominum | dominos |
奪格 | me | nobis | 奪格 | domino | dominis |
また、男性女性中性に分かれていることも忘れてはいけないだろう。これは次の形容詞のところで効いてくる。
形容詞も活用。形容される名詞に性と格を合わせるのだ。例として、過去完了分詞elongatus(遠ざけられた)を挙げる。
男性 | 女性 | 中性 | ||||
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単数 | 複数 | 単数 | 複数 | 単数 | 複数 | |
主格 | elongatus | elongati | elongata | elongatae | elongatum | elongata |
呼格 | elongate | elongati | elongata | elongatae | elongatum | elongata |
属格 | elongati | elongatorum | elongatae | elongatarum | elongati | elongatorum |
与格 | elongato | elongatis | elongatae | elongatis | elongato | elongatis |
対格 | elongatum | elongatos | elongatam | elongatas | elongatum | elongata |
奪格 | elongato | elongatis | elongata | elongatis | elongato | elongatis |
とりあえずラテン語についての大まかな骨格が分かってもらえただろうか?フランス語やスペイン語などの直接の祖先となる言葉なので、これらの言葉を習ってきた人にはいくつか馴染みのあるポイントがあったかもしれない。この文書を通して、少しでも皆にラテン語に興味を持ってもらえれば幸せである。