ここでは、ラテン語の動詞の基礎について学んでいきたい。
ラテン語でも、動詞の活用は行われる。ただし、英語では助動詞なんかを使う表現も活用で表現したりする場合があるので、案外活用の種類は馬鹿にならない。
まず、「直説法」(普通の文の述語)、「不定法」(「〜すること」という意味を表す)、「命令法」、「接続法」(英語の仮定法みたいな法)の4つの「法」があり、「能動態」、「受動態」の2つの「態」があり、英語の「三単現」の「三」だけで済んでいた「人称」が一人称二人称三人称の3つでフルに活用し、同じく「単」だけで済んでいた「数」がこれまた単数複数の2つでフルに活用し、最後に時制が「現在」、「過去」、「未来」、「現在完了」、「過去完了」、「未来完了」の6つ。計算すると4×2×3×2×6=288通りの活用!?実際は、例えば不定法は人称や数で活用しなかったりと活用しないものがあったり、活用させる代わりに助動詞を使ったり、使われない活用形があったりで、大分数は減るのだけれど、結構派手に活用するのだ。
ところで、ラテン語の辞書で動詞を引くと、
crēdō, -ere, -didī, -ditum 信ず
といったように、見出しに続いて3つ活用形が並んでいる。見出しは「直説法能動態一人称単数現在」の活用形であり、続く3つは、「不定法能動態現在」(crēdere。「-ere」はこの省略。)、「直説法能動態一人称単数現在完了」(crēdidī。「-didī」はこの省略。)、「目的分詞対格」(crēditum。「-ditum」はこの省略)である。この4種類の活用形が基本となって、他の活用形を作っていくので、この4種類は大事である。(能動態をとらない動詞など、この例に漏れる動詞もあるのだが、入門のレベルを超えるので割愛させていただく。)
動詞の活用として、まずは「不定法能動態現在」を勉強しよう。上に述べたとおり、不定法は「〜すること」という意味を表し、それの能動態なので、上に挙げた「crēdere」の場合、「信ずること」という意味を表す。不定法の時制に関しては、文の述語と同時の場合に現在形を使う。
この活用形は、大きく分けて4種類に分けられる。「āre」で終わるもの、「ēre」で終わるもの、「ere」で終わるもの、「īre」で終わるものの4種類である。「āre」で終わる動詞は「第1活用」、「ēre」で終わる動詞は「第2活用」、「ere」で終わる動詞は「第3活用」、「īre」で終わる動詞は「第4活用」とそれぞれ呼ばれる。その他にも不規則活用の動詞がいくつかあるのだが、be動詞「sum, esse, fuī, futum」以外は入門のレベルを超えるので割愛させていただく。
次に、「直説法能動態現在」を勉強しよう。これは、主語の人称と数で6通りの活用を見せる。この活用の基本になるのは、上に挙げた「直説法能動態一人称単数現在」と「不定法能動態現在」の2つの活用形である。
活用の例として、第1活用の動詞「negō」(断る)、第2活用の動詞「videō」(見る)、第3活用の動詞「crēdō」(信ず)、「capiō」(取る)、第4活用の動詞「dormiō」(眠る)、不規則動詞「sum」(be動詞)を挙げる。以下、活用の語幹は細字で、活用語尾は太字で示していく。
第1活用 | 第2活用 | 第3活用A | 第3活用B | 第4活用 | ||
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一人称単数 | negō | videō | crēdō | capiō | dormiō | sum |
二人称単数 | negās | vidēs | crēdis | capis | dormīs | es |
三人称単数 | negat | videt | crēdit | capit | dormit | est |
一人称複数 | negāmus | vidēmus | crēdimus | capimus | dormīmus | sumus |
二人称複数 | negātis | vidētis | crēditis | capitis | dormītis | estis |
三人称複数 | negant | vident | crēdunt | capiunt | dormiunt | sunt |
不定法 | negāre | vidēre | crēdere | capere | dormīre | esse |
第3活用のAとBの差は、不定法と比較した一人称単数の活用語尾が、「ō」か「iō」かで判別する。
ところで、ラテン語では主語の人称と数で動詞が活用するわけなのだが、これは、動詞がすでに主語の一部を表している、ということになる。このため、動詞の活用形から主語が特定できる場合は、わざわざ主語を表示しなくてもよい。
ラテン語の語順は、原則としてSOVである。ただし、比較的自由に語順を変えることができ、SVOの語順をとることもある。
ラテン語の動詞の活用の基本と、不定法能動態現在、直説法能動態現在の活用を学んだ。
次のラテン語を日本語に翻訳しなさい。解答は、問題の後ろの黒い部分をドラッグすれば出てくる。