この章では、第3曲用名詞について学んでいこう。
名詞や形容詞の曲用の種類の一つに、「第3曲用」と呼ばれるものがある。一言に第3曲用といっても、細かい部分で幅広いバリエーションがある。それでも、単数属格の曲用語尾が「is」である点では共通している。
第3曲用は、「子音型曲用」と呼ばれる曲用と、「I型曲用」と呼ばれる曲用に分けることができる。I型曲用をする名詞はさらに細かく分けられ、「純粋I型曲用名詞」と「混合I型曲用名詞」に分けられる。
第3曲用のバリエーションの一つの子音型曲用であるが、I型曲用との差は複数属格に典型的に現れ、複数属格の曲用語尾が「um」であることがこの曲用の特徴である。
この曲用も、男性・女性名詞と中性名詞とで異なった曲用を示す。男性・女性名詞の例として「ōrātiō」(f. 祈り)、中性名詞の例として「nōmen」(n. 名前)を挙げる。
男性・女性単数 | 中性単数 | 男性・女性複数 | 中性複数 | |
---|---|---|---|---|
主格/呼格 | ōrātiō | nōmen | ōrātiōnēs | nōmina |
属格 | ōrātiōnis | nōminis | ōrātiōnum | nōminum |
与格 | ōrātiōnī | nōminī | ōrātiōnibus | nōminibus |
対格 | ōrātiōnem | nōmen | ōrātiōnēs | nōmina |
奪格 | ōrātiōne | nōmine | ōrātiōnibus | nōminibus |
曲用形を見てわかるように、単数主格は語幹と異なった形をとる。それでも、語幹から単数主格の形はある程度推測できる。まず、語幹の最後に「s」をつけてみる。その後、単語の最後に対して以下の処理を行う。
なお、この処理に伴って最後の母音が変化することがある。また、この法則に当てはまらない単語もあるので、注意が必要である。
第3曲用の名詞のうち、子音型曲用をとる名詞は、単数主格と単数属格の音節の数が違い、語幹末の子音が1つの名詞に多い。
I型曲用の特徴は、複数属格の曲用語尾が「ium」で終わることである。その中でも純粋I型曲用は、混合I型曲用と比べて、単数対格の曲用語尾が「im」、単数奪格の曲用語尾が「ī」であるという特徴を持つ。
男性・女性名詞の例として「turris」(f. 塔)、中性名詞の例として「animal」(n. 動物)を挙げる。
男性・女性単数 | 中性単数 | 男性・女性複数 | 中性複数 | |
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主格/呼格 | turris | animal | turrēs | animālia |
属格 | turris | animālis | turrium | animālium |
与格 | turrī | animālī | turribus | animālibus |
対格 | turrim | animal | turrīs | animālia |
奪格 | turrī | animālī | turribus | animālibus |
中性の純粋I型曲用名詞の単数主格を語幹から推測する方法であるが、パターンは3つである。
第3曲用の名詞のうち、純粋I型曲用をとる名詞は、男性・女性名詞では単数主格が「is」で終わる一部の名詞であり、中性名詞では単数主格が「al」、「ar」、「e」で終わる名詞である。
混合I型曲用は、子音型曲用と純粋I型曲用を混ぜたような曲用である。純粋I型曲用と比べて、単数対格の曲用語尾が「em」、単数奪格の曲用語尾が「e」である、という特徴を持つ。
男性・女性名詞の例として「mors」(f. 死)、中性名詞の例として「os」(n. 骨)を挙げる。
男性・女性単数 | 中性単数 | 男性・女性複数 | 中性複数 | |
---|---|---|---|---|
主格/呼格 | mors | os | mortēs | ossa |
属格 | mortis | ossis | mortium | ossium |
与格 | mortī | ossī | mortibus | ossibus |
対格 | mortem | os | mortēs | ossa |
奪格 | morte | osse | mortibus | ossibus |
混合I型曲用名詞の語幹から単数主格を推測する方法は、子音型曲用の方法に順ずる方法や、語幹に「is」や「ēs」をつけてみる方法がある。
第3曲用の名詞のうち、混合I型曲用をとる名詞は、単数主格が「is」や「ēs」で終わる単数主格と単数属格の音節の数が同じ名詞や、語幹末に2つ以上の子音を持つ名詞に多い。
ラテン語の第3曲用の名詞について学んだ。
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