納豆天国風ラテン語入門講座2: 03 名詞の基本

ここでは、ラテン語の名詞の基礎について学んでいきたい。

名詞の変化について

ラテン語では、名詞は変化する。このような「名詞の変化」は一般に、「動詞の変化」を表す「活用」という語に対して、「曲用」と呼ばれる。

では、どのような場合に曲用が行われるのか。まず、単数と複数の区別を表すのに使われる。ここまでは英語と同じで、割となじみやすいかもしれない。

次に、日本語では「てにをは」といった助詞で表されている、「格の表示」という機能も、ラテン語では曲用で行う。02章で「比較的自由に語順を変えることができる」と言ったが、それもこのようなシステムがあるからこそなのだ。

格の種類

それでは、曲用で表される「格」とは、一体どのようなものがあるのだろうか。

Dominus descendit de caelis. 主が天より下り給いけり。
Domine, descende de caelis. 主よ、天より下り給え。
Finis regni Domini non erit. 主の王国の終わりは無からむ。
Domino gratias agimus. 我らは主に感謝をし奉る。
Dominum laudamus. 我らは主を誉め奉る。
Spiritus Domino emittitur. 聖霊は主から出る。

ラテン語には、このように6種類の格がある。大雑把に日本語訳で表すと、「〜が」(主語の表示)を表す「主格」、「〜よ」(呼びかけの表示)を表す「呼格」、「〜の」(所属の表示)を表す「属格」、「〜に」(間接目的語の表示)を表す「与格」、「〜を」(直接目的語の表示)を表す「対格」、「〜から」(分離の表示)を表す「奪格」の6種類である。

なお、それぞれに単数形と複数形があるので、曲用は計12種類となる。

名詞の性

ラテン語では、名詞は「男性」、「女性」、「中性」と、「性」で3種類に分けられる。この区別は、指示代名詞を使うときや、形容詞で形容するときに必要になってくる。

さらに、性によって曲用の型が微妙に変化したりもする。このからくりの裏には、「中性名詞の主格と対格は、単数と複数でそれぞれ同じ形」というルールが潜んでいる。「中性名詞だけ曲用が微妙に違う」ということも多いのだが、このことを覚えていれば理解しやすくなるだろう。

辞書の見方

ラテン語の辞書で名詞を引くと、

dominus,m. 主人

といったように、こちらは見出しに続いて1つ曲用形が続く。見出しの曲用形は「単数主格」、続く曲用形は「単数属格」(dominī。「-ī」はこの省略。)である。なお、複数形のみを持つ名詞の場合、「複数主格」と「複数属格」の組み合わせになる。その後の「m.」は、男性名詞であることを示している。女性名詞は「f.」、中性名詞は「n.」だ。

第1曲用

名詞の曲用のタイプは、大きく分けて5つに分けられる。今回学ぶのは、「第1曲用」と呼ばれる曲用だ。この曲用は曲用語尾が「a」を中心に変化するので、「A型曲用」とも呼ばれる。

例として、「hōra」(f. 時間)を挙げる。動詞のとき同様、語幹は細字、曲用語尾は太字で示していく。

単数複数
主格hōrahōrae
呼格hōrahōrae
属格hōraehōrārum
与格hōraehōrīs
対格hōramhōrās
奪格hōrāhōrīs

第1曲用をとる名詞のほとんどは女性名詞なのだが、一部の男性名詞の中にもこの曲用をするものがあるので、注意が必要である。第1曲用をとる中性名詞は存在しない。

語順について

名詞を修飾するときは、ラテン語では後ろから修飾することが多い。しかし、これも比較的自由に語順を変えることができ、前から修飾することもある。

おさらい

ラテン語の名詞の基礎と、第1曲用を学んだ。

練習問題

次のラテン語を日本語に翻訳しなさい。解答は、問題の後ろの黒い部分をドラッグすれば出てくる。

  1. Stellas(<星 stēlla, -ae f.) videmus.我らは星々を見る。
  2. Filiae(<娘 fīlia, -ae f.) poetae(<詩人 poēta, -ae m.) dormiunt.詩人の娘らは眠る。
  3. Filiae fabulam(<物語 fābula, -ae f.) narro.(<語る narrō, -āre, -āvī, -ātum)我は娘に物語を語る。
  4. Filia pila(<ボール pila, -ae f. 「〜で」、手段の奪格) ludit.(<遊ぶ lūdō, -ere, lūsī, lūsum)娘はボールで遊ぶ。
  5. Stellae illa(あの 「hora」にかかる) hora(「〜に」、時の奪格) sunt.星々はあの時間に在り。

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