ここでは、ラテン語の形容詞の基礎について学んでいきたい。
ラテン語の形容詞は変化する。ただし、気をつけてもらいたいのは、日本語の形容詞は、動詞のように活用するのに対して、ラテン語の形容詞は名詞のように曲用をする。同じく活用をしない英語の形容詞では、be動詞を使うことによって、活用できないことをカバーしていた。ラテン語でも、sum動詞と併用することで、活用しない、という点はカバーできる。
問題は、曲用をどう扱うかだ。ラテン語では、名詞を修飾する形容詞は、修飾される名詞と「格」、「数」、「性」を一致させるというルールがある。このルールに則って曲用が行われる。
ところで、少し形容詞からは話題がずれるのだが、格を一致させるというのは、別に形容詞に限ったことではない。sum動詞の補語など、名詞が名詞を修飾する場合でも、被修飾名詞の格と修飾する名詞の格を一致させなければならない。sum動詞の補語の場合、修飾されるのはsum動詞の主語、主語を表すのは主格なので、補語は主格となる。
この章で学ぶ形容詞の曲用の種類は、「第1・第2曲用」と呼ばれる曲用だ。女性形は、女性名詞の多かった第1曲用名詞と同じ曲用をし、男性形と中性形は、男性名詞や中性名詞の多かった第2曲用名詞と同じ曲用をする。
ラテン語の辞書で第1・第2曲用形容詞を引くと、
magnus, -a, -um; 大きな
といったように、見出しに続いて2つ曲用形が続く。見出しの曲用形は「男性単数主格」、そして「女性単数主格」(magna。「-a」はこの省略。)、「中性単数主格」(magnum。「-um」はこの省略。)と続く。
この「magnus」を例として、曲用の一覧を挙げる。
男性単数 | 女性単数 | 中性単数 | 男性複数 | 女性複数 | 中性複数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
主格 | magnus | magna | magnum | magnī | magnae | magna |
呼格 | magne | |||||
属格 | magnī | magnae | magnī | magnōrum | magnārum | magnōrum |
与格 | magnō | magnae | magnō | magnīs | magnīs | magnīs |
対格 | magnum | magnam | magnum | magnōs | magnās | magna |
奪格 | magnō | magnā | magnā | magnīs | magnīs | magnīs |
第2曲用の男性名詞には、単数主格の語尾が「母音+r」で終わるものがあったのだが、これに対応する第1・第2曲用名詞もある。男性単数主格が「母音+r」で終わり、他の曲用形は「語幹+曲用語尾」で終わる形容詞だ。こちらも名詞同様に、男性単数主格以外の語幹が、男性単数主格と同じ形になるものと、男性単数主格の最後のrの前の母音を落とした形になるものがある。
例として、「dexter」(右の)を挙げる。この形容詞は、男性単数主格以外の語幹が男性単数主格の最後のrの前の母音を落とした形になるパターンである。
男性単数 | 女性単数 | 中性単数 | 男性複数 | 女性複数 | 中性複数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
主格/呼格 | dexter | dextra | dextrum | dextrī | dextrae | dextra |
属格 | dextrī | dextrae | dextrī | dextrōrum | dextrārum | dextrōrum |
与格 | dextrō | dextrae | dextrō | dextrīs | dextrīs | dextrīs |
対格 | dextrum | dextram | dextrum | dextrōs | dextrās | dextra |
奪格 | dextrō | dextrā | dextrā | dextrīs | dextrīs | dextrīs |
この「dexter」という形容詞、男性単数主格以外の語幹が男性単数主格と同じ形になる場合もある。このことを頭の片隅で覚えておくとよいかもしれない。
ラテン語の形容詞の基礎と、第1・第2曲用、形容詞の名詞化を学んだ。
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