納豆天国風ラテン語入門講座2: 05 形容詞の基本

ここでは、ラテン語の形容詞の基礎について学んでいきたい。

形容詞の変化について

ラテン語の形容詞は変化する。ただし、気をつけてもらいたいのは、日本語の形容詞は、動詞のように活用するのに対して、ラテン語の形容詞は名詞のように曲用をする。同じく活用をしない英語の形容詞では、be動詞を使うことによって、活用できないことをカバーしていた。ラテン語でも、sum動詞と併用することで、活用しない、という点はカバーできる。

問題は、曲用をどう扱うかだ。ラテン語では、名詞を修飾する形容詞は、修飾される名詞と「格」、「数」、「性」を一致させるというルールがある。このルールに則って曲用が行われる。

ところで、少し形容詞からは話題がずれるのだが、格を一致させるというのは、別に形容詞に限ったことではない。sum動詞の補語など、名詞が名詞を修飾する場合でも、被修飾名詞の格と修飾する名詞の格を一致させなければならない。sum動詞の補語の場合、修飾されるのはsum動詞の主語、主語を表すのは主格なので、補語は主格となる。

第1・第2曲用形容詞

この章で学ぶ形容詞の曲用の種類は、「第1・第2曲用」と呼ばれる曲用だ。女性形は、女性名詞の多かった第1曲用名詞と同じ曲用をし、男性形と中性形は、男性名詞や中性名詞の多かった第2曲用名詞と同じ曲用をする。

ラテン語の辞書で第1・第2曲用形容詞を引くと、

magnus, -a, -um; 大きな

といったように、見出しに続いて2つ曲用形が続く。見出しの曲用形は「男性単数主格」、そして「女性単数主格」(magna。「-a」はこの省略。)、「中性単数主格」(magnum。「-um」はこの省略。)と続く。

この「magnus」を例として、曲用の一覧を挙げる。

男性単数女性単数中性単数男性複数女性複数中性複数
主格magnusmagnamagnummagnīmagnaemagna
呼格magne
属格magnīmagnaemagnīmagnōrummagnārummagnōrum
与格magnōmagnaemagnōmagnīsmagnīsmagnīs
対格magnummagnammagnummagnōsmagnāsmagna
奪格magnōmagnāmagnāmagnīsmagnīsmagnīs

第2曲用の男性名詞には、単数主格の語尾が「母音+r」で終わるものがあったのだが、これに対応する第1・第2曲用名詞もある。男性単数主格が「母音+r」で終わり、他の曲用形は「語幹+曲用語尾」で終わる形容詞だ。こちらも名詞同様に、男性単数主格以外の語幹が、男性単数主格と同じ形になるものと、男性単数主格の最後のrの前の母音を落とした形になるものがある。

例として、「dexter」(右の)を挙げる。この形容詞は、男性単数主格以外の語幹が男性単数主格の最後のrの前の母音を落とした形になるパターンである。

男性単数女性単数中性単数男性複数女性複数中性複数
主格/呼格dexterdextradextrumdextrīdextraedextra
属格dextrīdextraedextrīdextrōrumdextrārumdextrōrum
与格dextrōdextraedextrōdextrīsdextrīsdextrīs
対格dextrumdextramdextrumdextrōsdextrāsdextra
奪格dextrōdextrādextrādextrīsdextrīsdextrīs

この「dexter」という形容詞、男性単数主格以外の語幹が男性単数主格と同じ形になる場合もある。このことを頭の片隅で覚えておくとよいかもしれない。

形容詞の名詞化

英語では、形容詞に「the」をつけて「〜な人」、「〜な物」といった意味を表す用法があるのだけれど、ラテン語ではもっとストレートに、形容詞をそのまま「〜なる人」、「〜なる物」といった意味の名詞として扱うことができる。「〜なる人」は男性形を使って男性名詞となり、「〜なる物」は中性形を使って中性名詞となる。他にも、形容詞の意味から派生した名詞がいろいろあるので、気になる形容詞があったら辞書とにらめっこして変わった意味の名詞として使われていないか調べてみよう。例えば、先に挙げた「dexter」、女性形から派生した女性名詞「dextra」は「右手」を表したりするのだ。ラテン語では「manus」(手)は女性名詞なので、それが影響しているのか?

おさらい

ラテン語の形容詞の基礎と、第1・第2曲用、形容詞の名詞化を学んだ。

練習問題

次のラテン語を日本語に翻訳しなさい。解答は、問題の後ろの黒い部分をドラッグすれば出てくる。

  1. Judaei(<ユダヤ人ら Jūdaeī, -ōrum m.<ユダヤの Jūdaeus, -a, -um) in(crēdōの目的語を表す、対格をとる前置詞。) Deum credunt.ユダヤ人らは神を信ず。
  2. Stellas magnas dextras videmus.我らは右の大きな星々を見る
  3. Fabula tua(<汝の tuus, -a, -um) bona(<良し bonus, -a, -um) est.汝の物語は良し。
  4. Stellae hora prima(<第1の prīmus, -a, -um) sunt.星々は第1時間に在り。
  5. Vira viros multos(<多くの multus, -a, -um) caedunt.ウイルスは多くの男たちを殺す。

04へ。 | 「納豆天国風ラテン語入門講座2」トップページへ。 | 06へ。

「納豆天国」トップページへ。